衆道剣風録~契りの剣 四 決死!天寧寺!
 本坊を左手に、境内の奥に陣羽織を着た武士が床几に座っていた。その周りに襷の四人の配下。

「御身が佐久間五部浄殿か!」
「いかにも。お前に討たれた一雲が兄。また我等のお役目もお前のお陰で解かれた!佐久間一族、ここで終わる!お前には共に死んで貰う」

 その時、嗄れた声がした。

「やれやれ、境内を貸せと治部(石田三成)様から言ってきたので、どういうことかと思っていたらこんなことか」

 皆がその声に顔を向けると、本坊の玄関に一人の老僧が座っていた。
「善吉(ぜんきつ)和尚!黙っておれ!別にお主に加勢せよとは言わぬ」
「こんな老いぼれに治部殿は何をせよと申すのかの。お前等の様な者達に剣を教えたのは間違いじゃった」
「お主の剣と先祖伝来の流れを工夫して我が流れとした。それで満足じゃろうが!」
「・・・じゃがお前等は無垢の者達を殺めたであろう!」
「役目じゃ!」
「許せぬな」
「!」
 老師はふらと立ち上がると本坊の高みから階段を一つ一つ降りだした。齢は七十は越えているだろうか。その歩みはしっかりとしている。

 手には笹がまだ付いた細い長竹を持っていた。
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