衆道剣風録~契りの剣 四 決死!天寧寺!

十七

 野次馬達は熱狂した。

 どうも石田三成が許可した果たし合いらしい。屈強な五人の武士に対するは若侍一人、老人二人、若衆一人!どう見ても修理達に勝ち目はない。
 だが色小姓が果敢にも挑み掛かった!そして彼らには静音が不破万作に見えた。

「万作様!御武運を!」
「見事関白様のご無念を果たしなせい!」

「静音!戻れ!」
 修理も慌てて剣を抜いた。

 五部浄が半歩進み出て大声で言った。
「落ち着け!海道、お前の相手は儂だ!」
 その声を合図に後ろの二人が剣を抜き、静音に向かう。
 修理は佐久間と睨み合ったが、ちらと静音の方を見て叫んだ。
「静音ーっ!」

 静音はまだ剣を抜かず、柄を持って最初の敵に向かってずんずんと進む。敵は既に八艘の一ノ斬りの構えで歩み寄る。静音の構えを見て嗤う。こやつの右手貰った!疾風の様に踏み込んだ!
「きえい!」
 静音は切り下げられると、咄嗟に身を引いて右手を離す!

 再び『逆抜(さかぬき)の太刀』を試した。
 だが相手も手練れ、伊那よりも太刀筋が早かった。

 左肩に剣先が掠った!懐を切り裂き下に落ちる。そして静音の逆抜きが始まる。敵の落ちた剣先が敵の左肩の上に振り上げられる。静音の剣がやはり左肩の上で順に持ち帰られる。

 同時にそれが振り下ろされた!
 二人の剣が交差した!

 静音が片膝付いた!
 修理が叫んだ。
「静音!」
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