スイサイドシンドローム
頬を撫でる暖かく優しい風。
気が付くと僕の目の前には空と町並みがパノラマに広がっていた。
未だにぼんやりする頭、そしてぼんやりする目を擦りながら一歩を踏み出そうとするも、ある事に気付き思い止まった。

雑音だ、また雑音が聞こえる。

雑音を振り払おうと下を向いて初めて気付く。
自分がさっき一歩を踏み出そうとしていたその先には地面は無く、踏み出せる場所など無い。あるのはその下に見えるグランドとそこで体操着を着て走っている生徒達だけだった。

とたんに足がすくみ後ろに倒れそうになるが、何かによって後ろに倒れる事は無く、もたれ掛かる様な形になった。

僕はその何かに心当たりがあった。心当たりと言うかむしろ確信に近い。
恐る恐るその何かを後ろを向かずに手だけで触って調べてみた。

ああ、やっぱりそうだ。

フェンスだ。
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