小説:夢幻泡影

04


先端の鋭い耳、
背中に添えられた薄い羽、
身体をおおう衣、
所々に人ならざる何かを備えるその存在は優花に近づいてくる。


「!!」

「輝石を持ってるわね?」

後ずさる優花を止めるために放たれた一言。
それは優花にしかわからない一言でもある。

「あ、あるわ」

「……これを」

その存在が懐から取り出したそれを
優花の周囲に浮遊させる。

「う、浮いてる……しかもこれは輝石!!」

非現実を目の当たりにして素直に驚く優花。
流れるように他の輝石もバッグから抜け出て周囲に浮遊する。


「私が渡した金剛、白、白金を含め、全ての輝石を揃えたようね」

浮遊する輝石を確認し、そう呟いたその存在。
人とは違う何か。それだけがその存在にある。


「あなた。名前は?」

「伊藤 優花。そういうあなたは……何?」
すぐに問い返す。


「選ばれた者、伊藤優花。私の名前はマリナ・フィート」

右手をそっと宙にあげる。
突如、マリナの足元に輝く円が現れて回り始めた。

「人は私たちを妖精と呼ぶわ」


妖精。マリナ・フィート。
非現実との遭遇。全てはここから始まる。
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