月と太陽の事件簿3/ツといえばカ
あたしは久保美和の調書を見た。

「何よりも『か』と口にしたことがその証拠だよ。メッセージを残す途中で被害者は事切れたんだ」

「途中、ですか…」

達郎は3人の容疑者の写真を順番に眺めてゆく。

「第1発見者の隣人は、容疑者たちとは面識があったんですか」

「いいや。写真を見せたところ、見覚えは全くないそうだ。それがどうかしたかい?」

達郎は無言を返した。

「達郎くん?」

岸警部は達郎の顔をのぞき込んで、その表情からある事を察した。

「日野」

警部の声と視線があたしに飛ぶ。

あたしは目を丸くした。
確認の意味をこめて自分を指さしてみる。

それに対し警部は大きくうなずいた。

周りを見回すと、捜査員たちは全員、あたしを見ていた。

あたしはもう一度、自分を指さした。

捜査員たちは全員、大きくうなずいた。

『なんであたしが…』

心の中でつぶやきつつ、あたしは立ち上がって会議室を飛び出した。

< 10 / 18 >

この作品をシェア

pagetop