月と太陽の事件簿3/ツといえばカ
小泉秋保はそこに倒れていた。

「小泉さん!」

美和は部屋に飛び込むと秋保の上半身を抱き起こした。

秋保はうつろな目で美和を見た。

胸か腹を刺されたのか、秋保の白いトレーナーは血で真っ赤に染まっていた。

「誰にやられたの!?」

思わずそう叫ぶと、秋保の血に染まった指先が、床に何かを書いた。

それはひらがなの

「つ」

だった。

「つ?」

美和は問いかけには答えず、秋保はなおも指を動かそうとする。

しかし次の瞬間、彼女は激しくせき込んだ。

どす黒い血が口の端からこぼれ、トレーナーに新たな染みを作った。

「ムリしないで!」

美和は泣きそうな声で叫んだ。

すると秋保が絞り出すかのように何かをつぶやいた。

美和は秋保の口もとに耳を寄せた。

再び秋保の口が動く。

「か…」

たしかにそう聞こえた。

しかし次の瞬間、美和は秋保の体が一気に重くなるのを感じた。

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