短編集
消滅寸前
子供たちの笑い声が響く街。
広場には、噴水と色とりどりの花。
風に舞う花弁が、まるで、花嫁を祝福する紙吹雪のよう。
そんな光景が、一瞬にして消滅する。
原子爆弾。
この村人たちの、何人が知っているだろう?
ついさっきまで続いていた平和が、
たった一つの小さな爆弾で、全てが消えてしまう。
そして、
爆弾を投下するのは、
俺。
サポート役の友人は、楽しそうに爆弾の性能を話している。
近くにいたら、即死。
生き延びたものも、丸焦げ。
その後、死の黒い雨が降る。
昔聞いた、俺達の祖先の悲劇。
何百年たった今、今度は、俺達が原爆を投下する。
俺の先祖は、被爆者だったらしい。
皮肉なものだな。
上官の合図と共に、
投下ボタンを押した。
END