短編集
彼女の元に届いたのは、フィアンセの笑顔ではなかった。
顔は綺麗で、眠っているよう。
二度と目を覚まさないとは思えなかった。
彼の手は、何かを強く握っていて、仲間や家族が開こうとしても、全く開かなかったらしい。
しかし、彼女がそっと触れると、その手は開き、握られていたものが教会の床に落ちた。
『金色の、天使が装飾されたペンダント』
それは、彼女が首から下げている物と同じだった。
周りからは、彼の死を惜しみ、泣く声がする。
彼女は、冷たくなった彼の唇にキスをし、一筋の涙を溢した。