魔王さま100分の2
アイオネはため息をつくだけにして、無駄な念押しはしなかった。
「あと、いつもの」
魔王さまは、自分で前髪をよりわけてアイオネの前に少し屈む。
「するのですか?」
「して」
魔王さまの甘える声。
アイオネは、低くなった魔王さまの頭を優しく抱き、額にキスしてやった。
「えへへ、ありがと。これで寝られるよ」
喜ぶ魔王さまは、アイオネが扉を閉めやすいように笑顔で後ろに下がる。
アイオネは、勇者にしか動かせない扉に手をかけ、もう一度言った。
「おやすみなさい、魔王さま。また明日」
閉める扉の向こうで手を振る魔王さま。
扉が閉まりきると、夜の静寂がアイオネと魔王さまを隔てる。
アイオネがこの島にいて、一番嫌いな時間。