魔王さま100分の2
アイオネは、自分の気持を外に出さないようにして扉に背を向けた。
壁の門までまっすぐ、何もない均された土だけの魔王さまの領地を足早に歩き、
朝、蹴り開けた鉄門を今はゆっくり片手で押し開いた。
夜が静かな分、門が軋む音が広く鳴り響くが、これも塔の中の魔王さまには聞こえない。
魔王さまの眠りを妨げないので良いことだ。
そう思う事にして、アイオネは壁の外に出た。
「ん?」
と、壁のすぐ外に、飛行杖を携えた兵士の一団。
アイオネが出てくるのを待ちわびた気配をただよわせる彼らは、
通常は、この島の外で魔王領の見張りだけを勤めている魔法兵達。
アイオネがいるいないに係わらず、この島にあがることはない者達だ。
「何かありましたか?」
訊きながら、アイオネは何気ないそぶりで門を閉めた。