魔王さま100分の2
幽霊船と呼ばれた船は、霧を従え、戦艦の囲みの中へ前進してくる。
霧が降りた海面が荒く波立ち、霧中では雨が降り出す。
雨はすぐに豪雨となり、暴風が吹き荒れ、雷が走った。
カッ。
観客が覗くレンズに光りが届く。
その光りをバックに、幽霊船が全景を晒す。
「うおおおっ」
再びどよめきの声。
まず、霧を割ってそびえ立つメインマストの非常識な高さ。
朽ちてささくれ立った支柱と、
破れて穴だけ帆が、
朽ちているのに、
天を突くほど垂直に伸び、
破れて穴だらけのはずなのに、
暴風と豪雨を軽々と撫で受けてふくらみ、
人間がつくった船達を何倍も高い位置から見下ろす。