魔王さま100分の2
幽霊船が進むということは、観客達との距離も近くなる。
海戦の光りと音は、目や耳だけでなく肌からも伝わるようになる。
観客に一番近い戦艦が幽霊船の主砲を至近で受け、大きく傾くと、船体が軋む音がさらに重ねて聞こえた。
レンズを覗くことを忘れ、呆然と立ち尽くす者達も少なくない。
「幽霊船から魔物が飛び立ちました。ごく稀にこちらまでやってきます。ご注意ください」
そこに、流れる放送。
レンズを通して見続けていた者達は、
幽霊船から翼をもった魔物がどんどん上がっていくのが見えた。
赤黒い身体をもった小型の飛竜。
前足はなく、代わりについた大きな翼をはためかせてマストの上を旋回。
大群と呼べるほどの数がそろうと、互いが行う砲撃を上空でかわし、戦艦の後方に急降下して奇襲をかける。