魔王さま100分の2
「話には聞いておりましたが、ずいぶんと気さくなお方ですな」
ガナクが自分のひげをつまんで伸ばす。
「そういう表現をしてもらえるなら幸いです」
シルキスは、肩をすくめる。
「そして、シルキス殿も」
「僕ですか?」
「これだけの魔族に囲まれて猛りも怯えもない。さすが我らが魔王さまを単身で救った英雄」
「成り行きと慣れだけですよ。むしろ、ぞんざいに扱ってもらっていい人間です」
「そういう訳にはいきませんな。なにしろ我らとこの船は、シルキス殿の一言で駆けつけたようなものです」
「あー、そういう事になっていますか」
シルキスは、心底まいったなという顔をする。
「ええ、そういう事になっていますぞ」
ガナクの伸ばしたひげは、指を離すとふにゃふにゃと波を打った形に戻す。