魔王さま100分の2
「これで出てくる人は全部ですか?」
エミリオは、自分につきそっているイアリミア観光局の事務員に訊ねた。
「はい、後は船の中でお願いします」
事務員は若い声を出して答えた。
事務員の名は、ルッティ。
今年勤めだしたばかりの男の職員。
港でエミリオの補助担当になったのは2ヶ月前から。
初めて迎える観光地の夏に、やる気をみなぎらせている。
「案内します」
「よろしく」
一方、エミリオはこの街の教会に来て20年になるベテラン。
もう何度目になる夏は、落ち着いた温和な空気をエミリオに与えている。