魔王さま100分の2

「アイオネも私と結構して、おそろいの指輪をしようよ」

黒の魔王さまが、アイオネによりかかる。

「魔王さま、スープがこぼれますので、ふざけるときは下に置いてからにしてください」

「だって、置いてからくっついたら、また逆さにされて振りまわれるもん」

「はははっ、そっちの私はアイオネのことを良く知っているではないか。指輪が欲しければ良い細工師を紹介してやるぞ」

「して、してーっ」

「必要ありません。左手にはめる指輪は、誓い合った殿方に頂くものと家訓で決まっています」

もたれてくる魔王さまを肩で押し返すアイオネ。

黒の魔王さまは、それに逆らってさらにくっつく。

「アイオネ、夢を見るのもいいけど、現実も見ようよ」

「王国で勇者の男と結婚して、子供をたくさん生むのが一番ありきたりな現実だったんです」

「でも、今のアイオネの傍には私しかいないよね」

「わーんっ」

盛り上がってくる宴席。

シルキスは、保冷箱に入っていた酒瓶を出すか出さないか、真剣に考え始めていた。

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