魔王さま100分の2
黒の魔王さまのお願いとはいえ、シルキス達を領地に残して壁の外に出ているアイオネ。
少しは信頼が生まれたと思えるけど、裏切ったときの恐怖は想像だけにしておきたい。
「で、シルキス」
樹に乗るのをやめてくれた魔王さまが、シルキスのところに走ってくる。
「この樹をそのまま屋根に立てて新しいハシゴにするの?」
「本当はしばらく寝かせておいて、水気を抜いてから使いたいところなんですけどね」
生樹はそのままでは重たいし、乾燥する過程で変形することもある。
シルキスとしては慎重にいきたい。
金の魔王さまが訊く。
「しばらくとは、どれくらいだ?」
「数年くらいは」
「ええっ、そんなに待ったらシルキス達はいなくなっちゃう」
「そうですね」
シルキスは答える。
何年経っても、アイオネだけはいるらしい。