魔王さま100分の2

「いやー、アイオネはお芝居が上手くなったねえ。つくり笑顔は下手だけど」

「魔王さまは、また最後まで台詞を言えませんでしたね」

「ごめん、ごめん」

「謝罪はいりません、この遊びにそろそろ飽きてもらえれば十分です」

そう、これは魔王さまの遊び。

どこから演技だったかと言うと、
魔王さまがアイオネにもたれたところが開始の合図で、

そこから先はきっちりと演技。

「飽きるなんてまだまだ、まず最後まで出来るようにならないと」

「なら練習しておいてください。なるべくひとりで、私の見えないところで」

「アイオネは練習してくれたの?」
「言いたくありません」

「してくれたんだ」

アイオネを見上げた顔で笑う魔王さま。
僅かに尖った歯が、左右で一本ずつひかる。

お風呂に入ったら、歯ブラシを突っ込んでもっと光らせてやろう。

アイオネは決める。

< 84 / 582 >

この作品をシェア

pagetop