Snow Drop~天国からの手紙~(下)【実話】
あっちゃんはあこの手からその細い手を抜いて、腕を微かに上に伸ばした。

あっちゃんの指が動く。

弱い、弱い、ピース。あっちゃんは二本の指を立ててピースをしていた。

「うぁぁぁぁぁっ…………」

あこの後ろでおばちゃんが声をあげて泣き出した。

『うんっ!!うんっ!!

あっちゃんはパパだよっ!!』

あこはあっちゃんのピースした手を包み込む様に両手で握り締めた。

エリとヒロトもベッドの横に駆け寄ってきた。

「ずりぃよ!アツシ!!(笑)
先越されたわ!
半人前のおめぇが父親になんのかよ!ばぁあかっ(笑)
調子こいてんじゃねぇよっ!」

ヒロトはあっちゃんにイヤミっぽく笑った。

「あっ!」

エリがあっちゃんの顔を指差した。

――――!!!

「はっ(笑)
コイツ、笑ってる!!」

ヒロトは嬉しそうな顔をして、目にいっぱい涙をためていた。

あっちゃんの手を握りながら、顔を見る。

本当だ。笑ってる。
あっちゃん、喜んでくれてるんだよね?

あこ、産んでもいい?
あっちゃん、一緒に育てようね!!


ピリリリ!
ピリリリ!

モニターが急に激しい音を立てた。

ガクッ…

『えっ…えっ!!やだやだっ!!』

握りしめているあっちゃんの手が急にあこの手からすり抜けようとする。

あこはその手がすり抜けてしまわないようにしっかりと握った。

「アツシくーんっ?
アツシくーんっ!?」

先生があっちゃんのほっぺを何度も叩きながら声をかける。

パシッ…パシッ…
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