Snow Drop~天国からの手紙~(下)【実話】
分かってる…
お母さんがあこに望んでいる事くらい。

今までの弱いあこは、お母さんになんてなれない。
自信もなかった。

でもね?
でもね、お母さん…

あっちゃんに出会って、恋をして…今のあこは変わったんだ。

あっちゃんが、あこを変えてくれたんだ。

今のあこになら出来るよ!!
お母さん!!

『無理じゃないっ!
なるよ!
お母さんみたいなお母さんになるよっ!!

産ませてくださいっ…』

あこはそっとエリの腕からすり抜けて、お母さんに頭を下げてお願いをした。

お願い!!
あっちゃんと愛し合った証を、この手に抱かせて下さい。

「おばさんっ!お願いしますっ…」

「お願いしますっ…」

あこが頭を下げると、両隣で、エリとヒロトが一緒になって頭を下げてくれていた。

頭の上でお母さんの溜め息を感じた。

「あこ…」

お母さんはあこの頭を優しく撫でてくれる。

『お母さん?』
頭を上げると、お母さんは天使の様に、微笑んでいた。

「あこ…?

あなたは昔っから、人付き合いが下手なくせに…でも、人を選ぶ力は凄いのね……

いいお友達を見つけたわね…」

お母さんはエリとヒロトに優しい視線を送った。

「それに…あこは、世界一、素敵な人に出会って、世界一、素敵な恋をしたのねぇ……


頑張りなさい。
…元気な赤ちゃん…産みなさい。

途中でくじけるんじゃないのよっ?」

そう言って、お母さんはあこをきつく抱き締めてくれた。

『…ッッ…お母さんっ……

あり…がとぉっ…』

あこは崩れる様にお母さんの胸で泣いてしまった。

エリとヒロトの笑顔が眩しくて、嬉しくて、涙が止まらなかった。

お母さんの肩越しに、八重歯を出して笑っているあっちゃんの笑顔が見えた気がした。

お姉ちゃんがあこに背を向けて泣いてた。


夕方の空には、朱色の雲の隙間から地上に光が降り注いでいた。

あっちゃん?
見ててね?

あこは、強いお母さんになってみせるからね!!
< 163 / 286 >

この作品をシェア

pagetop