Snow Drop~天国からの手紙~(下)【実話】
看護婦さんは、あこの顔中からとめどなく溢れ出る汗をガーゼの様な布で何度も何度も拭き取る。


あぁぁぁ!!

もう本当にだめ!!
あこにはやっぱり無理だったんだよ!!

あっちゃん、助けて!!

だってね、天井の模様がね…
見えなくなって…
霞んで……


「あーっ!
頭が少し出てきたよーっ!!
もう少しだよっ!頑張ってぇー!
頑張っていきんでー!!」


無理!無理無理!

もうそんな力、あこには残ってないよ!!
限界だよっ!!

助けてよ、あっちゃん!!

あぁぁ…もうだめぇ…
意識が…遠のく…


「はい!出たぁぁ!!」

えっ、出た?
…産まれた…?


『ハァッ…ハァッ…』

何やら呆然とするあこの足元はやたらと騒がしい。

痛みがまだ残っていて起き上がれない。


ジョキン!

あこと赤ちゃんの繋がっていたへその緒が切り放された。

「産まれましたよー!お疲れ様ー!」

えーっ!
本当に産まれたの?

見たいよっ!!

あこはまだ残る痛む体を必死に起こして、赤ちゃんを探す様に辺りを見渡した。

でも、急に不安に襲われ、また分娩台に寝そべった。

『ハァ…ハァッ…あ…の…赤ちゃんはっ?』

赤ちゃん、産まれたって言ったよね?

産声は?
泣かないの?

…どうして?

産まれて来たはずの赤ちゃんの声が聞こえない。
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