シン
よく、
『人を愛することは、自分以外の誰かをそのまま丸ごと受け入れる』
なんて聞くけど、そんなのただの偽善者の戯言……。
『無償の愛』??
そんなの存在するわけないじゃん。
少なくともアタシはそんなの認めない。
カウンセリングを受けながら、ふと、医者の指先に目がいく。
まるで機械のように万年筆でするするとカルテに書き込んでいる。
時折無表情なメガネの奥から、こちらに視線を向ける。
同時に指先も静止し、こちらに傾く。
それが夜はどんな風なのか無性に興味が沸いた。
ベッドの上ではどんな風に動き、どれだけの妖艶さを増すのだろうか…。
同時に大きな嫌悪感も襲ってくる。
……所詮体なんて使い回し。
状況によっていくらでも変化をとげる汚らわしいもの。
何人もの誰かと重なり合い、何人もの誰かと愛し合う。
今こうしてお行儀よくしている指先も、満員電車で痴漢をしているかもしれない。
だからアタシは信用しない。
人を作り上げてる全てのものを…………
人の体も、感情も、発せられる言葉も何もかも、、、、。
でも心のどこかでは……………………、
できることなら、
変わらない何かが欲しかったのかもしれない。
ずっとただそれだけを求めてただけなのかもしれない。
でもその時のアタシはそれを認める勇気さえもなかったんだ。
この医者も結局一緒だった。
時折好奇な視線をアタシに向ける。
真面目な顔して、その頭の中じゃ何を考えてるかなんてしれやしない…。
アタシが足を組み替えすと、すかさず向けられる好奇の目。
アタシは………
いつもの通り、相手の目を潤んだ瞳で見つめ返した。
奥までじっと………………………………
嘘のアタシが相手の濁った瞳に反射して、アタシをあざ笑ってた。
コイツとも軽く『寝られる』
……そうアタシは確信した。