「 」の法廷
はじまりのその一
世界は広い。
だけど実際は、
狭いっ!
私──原田菜月(はらだなつき)──の【個】の世界とは、
某県の某市のとある町内にある。
ボロ屋な自宅と学校。たまに近場の中心部。
幸せも不幸せもその範囲内でしか展開されない。
そう、とてつもなく狭い世界なのだ。
何とか総理の発言がどうのとか、何々党幹部がとか。百年に一度の大不況がどうのとかのニュースも他人ごとで。
おっきな世界の話は私のせんまーい世界には入りきらない。
世の中と呼ばれるものが今、どんな状況かだなんて考えたこともないし、いいや、考える余裕がないだけかも。
特に今、
この幸せ一色に染まる世界に存在している私には!