「 」の法廷
「誰、それ?」
一瞬、世界が停止した。
停止して、それから。
驚くクラスメートや先生の顔も気にならない。
いや、気づいた時には私は……叫んでいた。
一度切った口火は抑えようがない。
「何言ってんの!? 長谷川夕だよ! ここん席に、今日は休みかもしんないけれどっ!」
「ちょ、ちょっと菜月」
「誰? って何それ!? いい加減にしてよ!」
「どうした、原田」
「先生、夕ちゃん──長谷川夕は今日欠席なだけでしょ!? な~んで今日に限って呼び忘れるかなあ。みんなして変な冗談はやめてよね」
「落ち着くんだ原田。そんなやつはこのクラスにはいな、」
「嘘はやめてっ!!」
あり得ない。
あり得ないあり得ないあり得ない!
百歩譲って今までのことが、そう、医学的証明? 戸籍的?
難しい専門用語であれだこれだと理由づけられて、飲み込まされていても。
彼女のこと、
夕ちゃんのことは断言出来る。
彼女はここにいた。
私の友達で、小学校からの付き合いで、
「菜月、ちょっと落ち着け」
黒田太陽が席を立って私の体を押さえた。
そう、あんただって。