「 」の法廷
*
「ちょっとさ、付き合ってよ」
ぼんやりと学校での一日を保健室で過ごして、下校のチャイムが鳴り止んだや否や。
私の鞄と自分の鞄を手に、黒田太陽はそんなことを言ってきた。
幾分か落ち着いていた私は拒否を即答。
けれど強引に。
ずるずる引きずられる形で連れてこられたのは、市の中心部。
お世辞にも都会とはいえないけれど、この辺りでは一番人通りが多く、色んなお店が集中している場所。
微妙な高さのビルが軒を連ねる一角に引きずり込まれて、早歩きだったその足がようやくそこで止まった。
手を振り払う。
「な、何なの本当に!」
「照れてるのか? たかが手ぐらいで」
「んな!」
なんてことを!
ていうか、今までの様子とちょっと違う。
「なによ。なんの用事よ」
「そろそろ潮時なのかな、て思って」
「なにが!」
「あんだけ騒がれるとさ、後々色々厄介なんだよ」
「は?」
「長谷川夕」
「え?」
「何で消えちゃったか知りたくない?」