「 」の法廷



 ……どうして。

 だってあんた、夕ちゃんは、




「知らないって」

「知ってるよ。正しくは朝までは知っていることになっていた、だけどね」

「どういうこと?」

「だから、教えてあげようと思って──なんで両親、祖父、友人が消えたのかとか。俺がいきなり現れたのか、とか」




 いいものを見せてあげる。

 口角を上げてニヤリと微笑んで。

 黒田太陽は指差した。


 その指先を追って──





「え?」




 人通り。
 忙しなく歩く人、
 ぼんやりしている人、
 携帯片手に話し込んでいる人、沢山の人が今日もそこを歩いている。



 歩いていた、のに、



 
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