「 」の法廷
「なんで!?」
まるで初めから存在していなかったかのように、一人、二人と音もなく。まばたきしちゃったら本当に気づかない。
ふっ、ふっ、と次々に消えていった。
だけど周りの人たちは知らんぷり。
……違う。
見えていないんだ。
「驚いたでしょ?」
黒田太陽は笑った。
こんな、笑えない。
「なんで、どうして!? どうして誰も……!」
気づかないの!?
「気づかない。それは普通のことなんだよ菜月」
「どういうこと!?」
「気付く方が特別なんだ」
「はあ!?」
「この世にね、永遠なんてものはない。いや、永遠たらしめる為に、壊れて再生して壊れて、そうやって【無限】を作っていくのさ」
言っていることがよくわからない。
「菜月は特別。それも特別の中の特別」
一人、二人、また消えていく。
おかしな光景に気がおかしくなりそう……。
呆然とそれを見つめていると、黒田太陽は私との距離を縮めて、私の前髪をあげる。