「 」の法廷



 昼休み。
 屋上に移って私は昨夜の出来事を話した。


 夕ちゃんは栗茶色のストレートロングを指でくるくるさせながら(ちょっと気だるげに)、もう片方の手に持つパンをもしゃもしゃと食事ながら聞いてくれる。



「で、何があったのよ」

「それがね、」





 さて、昨夜の出来事である。



 めでたく嬉しい三ヶ月記念はベタだけど買い物巡りと決定していた。


 は、表向きで本当は「そろそろいいか?」の彼のちょっぴり照れたような笑顔の返事をする予定だった。



 待ち合わせ場所は駅前のカフェで。


 その店一番の甘ったるいコーヒーを注文したのはいいが、緊張のせいか味がわからない。更にミルクやら角砂糖やらをどぶどぶ入れて──





「糖尿病になるわよ」

「えぐ、でも、全然味がしなくって、えぐ」




 話を戻そう。

 で、破壊的なまでにあまーくなったそのコーヒーだったものを(味覚がいつも通りならば吹き出していた)飲みながら待っていて、


 私は別の意味で、それを豪快に吹き出した。



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