「 」の法廷
ふと、夕ちゃんは私から視線を剥がして、それからおっきな溜め息を一つ。
「あーやだやだ。やってらんない」などなど言いながら、手をひらひらさせて去ろうとする。
意味がわからなくて呼び止めようとしたところで、夕ちゃんは私を顎で促した。
振り向けばそこに。
どこの国から飛び出してきたのですか、な完全王子様風の男子が一人、たおやかな笑みを携えてつっ立っていた。
──誰?
「ほら迎えにきてるよ。姫のご機嫌とりに」
「は?」
「そのすっとぼけが可愛いのがこれまた憎い。ちゃんと仲直りしなよ」
意味が全っ然わからない。
わからないついでに、更に二人は意味不明な会話をぶっ飛ばし始めた。