幼なじみの執事
つき合ってるとはいえ、まだ何にもなかったあたしたち。
だから、それはあたしにとってファーストキスで……
それなのにあまりに呆気なくて、何がなんだか分からないほどの一瞬の出来事だった。
あたしから離れていった彼の唇が動き出す。
「ゴメン……ズルいことして。でも僕は、葵衣ちゃんを諦める気はないよ。
その人を忘れるまで僕を利用していいから、別れるなんて言わないで欲しい」
「けど…」
「僕が……嫌い?」
胸を締めつけるような彼の問いかけに、拒めなくて…
「嫌いだなんて…」
「なら傍にいさせて?葵衣ちゃんを困らせること、もうしないから」
大きな手が、あたしの頭をそっと撫でた。