幼なじみの執事
「おーい、葵衣ちゃん?」
ボーッとしてたあたしの顔の前で、春日部さんがブンブンと手を振った。
「あぁゴメン。昨日、家族がお祝いしてくれたこと思い出して」
「そっか、社長は今日機嫌が良かったから、よっぽど嬉しかったんだろうなって思ってたよ」
「もぉ、パパは親バカだからね」
笑いながらデザートのジェラートを口に含んだ。
「何かお祝いに欲しいものある?」
「ううん…今日の食事で十分」
「そう?」
腑に落ちない顔を見せた春日部さん。
それでも今までだって十分すぎるほど良くしてくれた彼に、他に望むものなんて何もなかった。