幼なじみの執事
「絢斗、葵衣様に挨拶しなさい」
神影がポンッと背中を押すと、おずおずと照れくさそうに小さな声で話し出した。
「神影絢斗です…よろしくお願いします」
家でも忙しいパパに、自分で輸入家具の店を開いていてほとんど一緒にいてくれないママ。
明るく振る舞っていても、あの頃のあたしは小さな心が淋しさで潰されそうだった。
そこにやって来た、2つ上のお兄ちゃん。
嬉しくないわけがなかった。
「遊ぼーよ、絢斗」
あたしは手を握り、走り出した。
戸惑いを隠せない絢斗に、あたしは満面の笑みを向ける。
「絢斗は、今日から葵衣の友達ね」
恥ずかしそうに目をそらしながらも、頷いた。