幼なじみの執事


絢斗が歩くと、周りが振り返る。


ショップの女性店員は目を輝かせ、声がワントーン高くなる。



でも外見だけじゃない、にじみ出す優しさに心を奪われるんだと思う。




「ねぇ、絢斗。これ似合う?」



ワンピースを見せて尋ねた。



どうせすんなり「お似合いですよ」とか言うと思ったのに……


別のワンピースをサッと見回して、その中のオフホワイトの軽やかなワンピースを手に取った。



そしてそのワンピースをあたしにあてると、満面の笑みを浮かべた。



「こちらの方が葵衣様にはお似合いです」




今度はこっちが顔を赤くする番だった。




「じゃあ、このワンピとこの靴をください。今着ていきます」



店員と絢斗が同時に驚く。



「制服じゃデート出来ないでしょ?」



「デート…ですか」




絢斗の表情が陰った感じがしたのを、あたしは見ない振りした。



きっと“イヤなの?”って聞いたって“いいえ”って言われるに決まってる。


だから

知らない振りするんだ……




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