幼なじみの執事
第2章 加速する想い
執事として?
「ママ?!苦しいんだけど」
学校から帰って久しぶりにママの顔を見たと思ったら、あたしを痛いぐらいにギュウっと抱きしめた。
「久しぶりの葵衣の感触〜!チャージしてかないと、淋しいもん」
『もん』って……
ママってば、一体いくつよ?
淋しいのはこっちの方なのに、この無邪気な性格に反論出来ずにいる。
ママの足元には、大きなバッグが3つ。
「また、海外?」
「ゴメンね、今回のヨーロッパは長期滞在になりそうなの。
今から打ち合わせで、明日の朝イチの便で飛ぶから」
「分かったよ。気を付けてね」
ママを前にすると、大人にならずにはいられない。
親に甘えるという感覚は、とっくの昔に忘れてしまっていた。
「絢斗くん、相変わらずカッコいいわね〜。
葵衣のこと、いろいろとよろしくね」
「はい、奥様。お気をつけていってらっしゃいませ」
「じゃあ、いってきまーす」
あわただしく去っていったママを見送り、ソファーに座った。
「奥様、相変わらずお元気ですね」
「ホントに…必要以上にテンション高くて、めんどくさいママ!」
「お母様のこと、めんどくさいなんておっしゃらずに……とても素敵な方だと思います」
寂しげに伏せた長いまつ毛が、瞳に影を作る。
絢斗はもうママに会えないんだもんね……
「あたしはママのこと好きだよ?まぁママっていうより、友達みたいだけどね」
すると絢斗はクスッと笑った。