幼なじみの執事
第3章 絶望の中
信じたくない事実
「あっ…」
それは日曜日の夕方。
あたしが本屋に行くために、玄関を出たときだった。
はなれの家に向かう2つの影。
絢斗と…千嘉さん……?
今日特に用事のなかったあたし。
午後は、絢斗に休みをあげていた。
ふとあたしの気配に気づいた千嘉さんが、笑顔で手を振った。
「葵衣ちゃん、ちょうどいいところで会えた」
その時、あたしにはどうしても目を離せなくなった場所があった。
千嘉さんの腕が絢斗の腕に、絡んでいる……
千嘉さんは絢斗を引っ張るようにして、あたしに近づいてきた。
「葵衣様、どちらかお出かけですか?」
「う…ん。そこの本屋に……」
絢斗を上目遣いで見た千嘉さんは、甘ったるい声を出した。
「ねぇ、葵衣ちゃんに言ってもいいでしょ?」
あたしに、何を……?
すると絢斗は特に表情を変えるでもなく、千嘉さんに軽く頷いた。