幼なじみの執事
そんなときにバッグに入れたケータイが突然鳴りだし、ビクッと身体が跳ねた。
ディスプレイには“仁”と出てる。
無意識に通話ボタンを押し、ケータイを耳に当てた。
『葵衣?オマエ今なにしてんの?ちょっと聞きたいことあってさ、暇なら出てきてくんないかな』
仁の声を聞いた瞬間に、込み上げるものと共に涙が溢れでた。
『なぁ、葵衣!聞いてんの?』
「……ヒック……ヒック…」
『どうした?何かあったのか?』
あたしは何も言わず、泣くしか出来ない。
『泣いてるだけじゃわかんねぇだろ?何があったか言ってみろよ』
「仁……あたし、どうしたら…いいの?」
『今どこにいんだよ?すぐに行くから場所言えよ』
あたしは駅前通りにいた。
その駅名を口にする。
『分かった。近くに行ったらまたケータイ鳴らすから、そこで待ってろ!すぐに行く』
仁は一方的に話すと電話を切った。
あたしは涙でぼやけた視界で、その切れたケータイをボーッと見つめていた。