幼なじみの執事


仁が来るまでの間、壁に寄りかかり流れゆく人波を見つめていた。



仲良さそうに笑顔で話すカップルに、絢斗と自分を照らし合わせてみる……




あたしがもし普通の家庭に生まれて、絢斗と普通に出逢ってたら


もっと素直にまっすぐに絢斗に向かっていけたのかな…?



あんな風に絢斗の隣で笑っていられたかな……





朝から曇っていた空から、ポツリポツリと雨が降りだした。



道行く人たちがあわただしく走り出す。




雨と零れる涙が混ざり合って、頬を濡らした。




あたしはそのまましゃがんで、膝に顔を埋めた。





絢斗……



どんなに心で名前を呼んだって、答えてくれることはないんだよね……




< 71 / 180 >

この作品をシェア

pagetop