幼なじみの執事
仁が来るまでの間、壁に寄りかかり流れゆく人波を見つめていた。
仲良さそうに笑顔で話すカップルに、絢斗と自分を照らし合わせてみる……
あたしがもし普通の家庭に生まれて、絢斗と普通に出逢ってたら
もっと素直にまっすぐに絢斗に向かっていけたのかな…?
あんな風に絢斗の隣で笑っていられたかな……
朝から曇っていた空から、ポツリポツリと雨が降りだした。
道行く人たちがあわただしく走り出す。
雨と零れる涙が混ざり合って、頬を濡らした。
あたしはそのまましゃがんで、膝に顔を埋めた。
絢斗……
どんなに心で名前を呼んだって、答えてくれることはないんだよね……