幼なじみの執事
「お嬢さん、濡れますよ」
雨が当たらなくなり上から降ってきた声に顔を上げると、傘をさした仁が立っていた。
「また風邪引くぞ」
差し出された仁の手を取った。
温かい……
立ち上がったあたしに、仁は優しく微笑んだ。
「そこの店でいいか?」
仁はあたしを、コーヒーのチェーン店へと連れていった。
「ほらっ、とりあえず飲め」
温かいカフェオレをあたしに手渡す。
「仁、ゴメンね」
「執事と何かあったんだろ?」
「……うん」
続きを話そうと思ったら、あたしのケータイのメロディに遮られた。
着信相手は絢斗だった。
ためらっていると、仁は出るようにあたしを促した。