幼なじみの執事


「葵衣ちゃん、久しぶりだね」



えっとこの人って確か……




「細川さん、お久しぶりです」



名前を覚えるのは一苦労だけど、これは大切。


それでニッコリ笑っておけばいい。




「葵衣、こっちに来なさい」



ごちゃごちゃたくさんの人の中から、パパがあたしを呼んだ。




「紹介するな。これがうちの娘の葵衣」



「初めまして」




あたしが微笑みながら挨拶したのは、細身のスーツに身を包んだとても若く見える男の人。




「うちの社員の春日部 弘毅(かすかべ ひろき)くんだ。
まだ24歳だけど、とても効率のいい仕事をしてくれるから、期待してるんだよ」




「期待だなんて……ありがとうございます。
葵衣さん、よろしくお願いいたします」




涼しげな目元を細めて、優雅に軽く頭を下げた。




「春日部くん、悪いが葵衣の相手してくれるか?」




「パパ?!ちょっと?」




「春日部くんは楽しい男だから、お前を飽きさせないよ」




そんなぁ……パパのバカ。


いま会った人と話せって言われて残されても、困るんですけど……




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