幼なじみの執事
「葵衣は、春日部くんとお付き合いしてるんだって?」
えっ…?!
なんで……
驚いてすぐに見たのは、パパじゃなく絢斗だった。
一瞬だけ表情は固くなったけれど、すぐにいつもの涼しげな絢斗に戻った。
「春日部くん、わざわざパパのとこまで来て頭を下げたんだよ。
“申し訳ありません。お嬢様とお付き合いさせて頂いてます”ってな」
「あ…たし……」
「別にパパは気にしないよ。そうやって丁寧に報告に来た、ばか正直なとこも気に入ってるし。春日部くんなら安心だよ」
嬉しそうに話すパパに、なんとか微笑んでみるものの指先は冷たくなってる。
絢斗には、まだ知られたくなかった……
「葵衣様、お待たせいたしました」
紅茶を置く絢斗に、思わず声を掛けた。
「あのっ、絢斗……」
すると絢斗はかがんだままで、あたしに妖艶で綺麗な温度のない笑みを見せた。