HANDS
その姿をじっと見ていると、何を思ったかセブンスターの箱が目の前に差し出された。
「いらない。
嫌いなの、タバコ」
「あ、そ」
そう言うと、まだ長いタバコを灰皿に押し付けた。
もしかして気遣ってくれた?
「ねえ、この子なんて名前?」
猫の首を撫でてやりながら聞くと、一瞬ためらってから答えが返ってきた。
「…虎次郎」
「ぷっ、何それ渋っ!
お前、虎次郎っていうの~?」
ケラケラ笑いながら猫に話しかける。
猫は不思議そうににゃー?と鳴いている。
「俺じゃねぇよ。
兄貴のオンナがつけた名前だから」
今度はあたしが、ふーんと興味なさそうに言ってみた。