HANDS

「ん?じゃあなんでリュウが飼ってるの?
お兄さんの猫じゃないの?」


「――飼えなくなったから」

あたしのほうを見ずにそれだけ言うと、玄関に向かって歩き出した。


「俺仕事行くから。お前も早く帰れよ」


「はいはい。

って、ここドコか分からないんですけど。
ライブハウスにバイク置いてるから、そこまで連れてってよ」

「は。めんどくせぇー」


リュウの言葉は聞かなかったことにしてベッドから立ち上がり、虎次郎に手を振った。

キーケースを手にしたのを見て、興味津々で話しかける。

「車何乗ってんのー?」


リュウは玄関に鍵をかけ、階段を下りながら

「ハマー」
と答えた。

「は!?まじで!?」

驚いて声を上げるあたしに、

「んな訳ねーだろ。あんなの維持できるか」

とバカにしたように答える。
やっぱムカつく。



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