HANDS
「でも俺、『おめでとう』とか言えなくて。
へぇ~って適当に流して、こっちに帰って来たんだ」
「…うん」
虎次郎は一心不乱に毛づくろいをしている。
そう言えば、お兄さんとユリちゃんが虎次郎を飼えなくなった理由って――…
すう、と息を吸い込んで、リュウが口を開いた。
「その3日後に、…2人とも死んだ」
「……え」
だから【安らかに眠れ】ってこと…?
「兄貴のバイクで2ケツしてて、飲酒運転のトラックに突っ込まれて――……」
今にも泣きそうな表情で、視線は雑誌に落としたまま。
あたしは、かける言葉が見つからなかった。