HANDS

無言で、あたしの一歩先を歩いて行くリュウ。


「ちょ、ちょっと…手……」

「あ?ああ」

うろたえるあたしから、リュウはしれっと繋いでいた手を離した。
自由になった右手を添えて、ちょっと立ち止まってカルピスを一口飲んだ。

ふう、と息を吐く。


「何、勝手なこと言っちゃってんの?」

「何が」

「『人のオンナに』…とか……」

もごもご喋っていると、部屋のドアの前に着いた。


「お前が、さっきのヤツと話したくなさそうだったから」

リュウは前を向いたまま、ぼそっと呟いた。
< 153 / 192 >

この作品をシェア

pagetop