HANDS

やっぱムカつく。

「昨日から何度もすみませんねー」

嫌味ったらしく言って、またワゴンを押して行く。
でもすぐに、声に引き留められた。

「あ、おい。
キャットフードってどこら辺に置いてあんの?」


「じゃあ、ご案内いたしますね~」

キャットフードって言葉が似合わないなー。
リュウって虎次郎に笑いかけたりするのかな。

そもそも、ちゃんと撫でたりして可愛がってるのかな。
……想像できない。


営業スマイルを作って、リュウを連れて行く。

「こちらです」
「どーも」

真剣な表情で吟味している姿を見ると、思わず笑ってしまいそうになった。



「虎次郎によろしくね」

お釣りを渡しながら言うと、

「おう」

とだけ言って、リュウは帰って行った。

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