HANDS
――昨日のこと。
スプレーで落書きされた建物の脇に並んでいると、ギャルが走って来た。
「ごめん、遅くなってー」
「はー。アイコっていつもそうだよね~。
ほんとに…。
てか、その靴で入る気!?」
ぐりんぐりんに巻いた髪に露出の高い服装で、カカトの高いヒール。
「あ、やっぱダメかなぁ?
スニーカーに替えてくるね~」
最初からスニーカー履いて来いよ。
停めている原付のところへ戻って行くアイコの背中に、心の中で突っ込む。
「ごめんごめんー」
悪びれる風もなく戻って来たアイコは、あたしの隣に立つ。
「あ、レナのそれってティンバー?
いいなぁ~あたしも欲しい~」
あたしが履いているハイカットのスニーカーを指差して、うらやましそうに言ってくる。