HANDS
「なんでって…。
前も言ったじゃん」
虎次郎に会いに行きたいから、早くこの場を立ち去りたい。
「そっかぁ。
あ、金はちゃんと返すから。
また連絡するわ」
タバコを落として踏み潰した。
その姿にイラッとしてしまう。
「じゃあね」
メットを被ってバイクに乗り、急いで発進させた。
あー。なんかツイてない。
リュウんちの駐輪場は狭かったけど、自転車を押し退けて無理矢理バイクを突っ込んだ。
インターホンを押してしばらくすると、ドアの向こうから虎次郎を抱いたままのリュウが現れた。
「にゃー虎次郎、元気だった~?」
思わず、子どもに話しかけるような口調になってしまった。