HANDS

しばらくは呆然としていたけど、だんだんリズムに乗って楽しくなってきた。

お腹に響いてくるベース音が心地いい。

腕を上げて声を出していると、後ろから押してくる人たちのことも、
多少は気にならなくなる。


ぎゅうぎゅうに押し込められた空間で、観客のテンションは上がりっぱなし。

ボーカルもTシャツを脱ぎ捨てて、半裸で歌っている。


そして、ボーカルはギターをかけたまま観客の上に背中からダイブしてきた。


ちょうど、あたしたちの真上に。



指先に、汗でヌルッとした背中を感じた瞬間、

周りの人たちがスローモーションのように見えた。

< 6 / 192 >

この作品をシェア

pagetop