HANDS

ちょっと、泣きそうな顔に見えたんですけど。
気のせい…なのかな?

虎次郎があたしの手をすり抜けて、リュウに擦り寄って行く。

それをきっかけに、あたしは立ち上がった。
「帰るね」

この気まずい空気の中には居られない。
って、自分が作った空気なんだけど。


「ああ。またコケんなよ」

バカにしてるのか心配してくれてるのか、よく分からない声のトーン。
虎次郎とリュウが見上げてくる。


その目を見ていると、自分でもなんでか分からないけど、


心臓がキューってなった。


「じゃあ、また。
虎次郎、シャンプー覚えといてね」

ひらひらと手を振って、部屋を出た。


階段を下りて、ふう、と息をつく。
さっきのキューってなんだったんだろう。

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