HANDS
オンナの影

「じゃあ、俺らちょっと行くとこあるから」
「ばいばーい」

アイコとコウタくんは、すごい勢いで帰って行った。


「えと…じゃあ、よろしくお願いします」

窺うようにリュウを見上げると、めんどくせーと言いたそうな顔。
でも、何も言わずに車に乗り、あたしが乗るのを待ってくれた。

「お前、せめて砂はらってから乗れよ?」

「あ、はい」

そんなに睨み効かせないでよ。
怖いから。

フラフラしながら服についた砂をはらって、よじ登るようにサーフに乗り込んだ。


今日はピアノの旋律が綺麗なバラードがかかっている。

また洋楽かぁ…。
なんて歌ってるのか分からないけど。

でもなんか、安心する――。

リュウは話しかけてこないから、自然に目を閉じていた。
< 84 / 192 >

この作品をシェア

pagetop