HANDS
テレビをつけようと思ったけど、リモコンが何個かあってどれか分からなかった。
キャットフードが噛み砕かれる音と、水道の水が跳ねる音だけが聞こえてくる。
いいなぁ、家に帰ったら迎えてくれる虎次郎が居て。
しなやかな背中のラインと、長いしっぽを見つめた。
あたしも猫飼おうかなー。
あ、でもペット不可だから引越ししなきゃ無理か。
ぼんやり考えていると、水を入れ替えたお皿を床に置いて、リュウがこっちに歩いてきた。
「ねえ、テレビのリモコンどれ?」
見上げて問いかけても、答えてくれなった。
そして、あたしの隣にゆっくりとしゃがんだ。
「どうしたの……?」
真っ直ぐにあたしの目を見つめたまま、リュウが低い声で言った。
「覚悟はできてんだろうな?」